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みつかる、ヘルスケア。

【薬剤師監修】子供は泥だらけになった方がいい?「衛生仮説」のお話し。

【薬剤師監修】子供は泥だらけになった方がいい?「衛生仮説」のお話し。

田舎に住んでいる人の方が、アレルギーになりにくい?

先進諸国の仲間入りをしている日本で、生活環境、生活水準、食生活、予防医療などが充分に整っているはずなのに、なぜアレルギー疾患で悩む人は減らないのでしょうか? よく「田舎に住んで生活している人にアレルギー患者は少ない。」と聞きますが本当でしょうか?じつは、「衛生仮説(えいせいかせつ)」という医学界の言葉があり、アレルギーの発症や進展にどのような環境要因が関係しているか真面目に研究されています。

少しくらい汚れた環境の方がいい?

1989年に英国の研究者が発表した論文には、17,414人もの人を対象にアレルギーの病歴と家族との関係性を調査した結果が記されています。 その結果、1歳までの湿疹および11歳~23歳までの花粉症の有病率は、「家族」、「きょうだい」の数と有意な負の相関か見られました。 ですから、年長者(長男や長女)よりも年少者(次男、次女以下)では湿疹や花粉症などのアレルギーの症状が軽く、また年長者であっても家族が多ければ、アレルギーの症状が軽いということになります(実際の論文ではもう少し細かい説明がなされています)。 これらの結果について、アトピーや花粉症は家族の人数の減少に伴い、家庭内が清潔になったことが原因で発症しやすくなっているのではと考察されています。つまり、子供のころからあまり清潔な環境で育つよりも、少々汚れた環境の方がアレルギーになるリスクは少ないと考えることができるのです。

動物実験でも証明されている?

この衛生仮説を裏付ける動物実験として、無菌のマウスに炎症性腸疾患(IBD)、喘息を誘導させると非常に悪化することが報告されています。 本来であれば、新生児は生まれてさまざまな菌と出会い、特に口腔内から消化管に至るまで腸内フローラと呼ばれる腸内細菌が作られていきますが、無菌マウスの場合は腸内フローラが存在しないので、そのことによりT細胞の一種がうまく機能しなくなり、炎症反応を悪化させると考えられています。この結果に関連して、新生児、乳幼児に抗生物質を過剰に投与することと、アレルギー発症の関連についても研究が進んでいます。

環境や食べ物でアレルギーを予防?

 このような研究報告から考えると、家の中をあまりにも清潔にしすぎるのも子供にとって良くないのかも知れません。自然界にはグラム陰性菌と呼ばれる細菌が存在し、幼少期にその菌の構成成分のLPSと呼ばれる物質に晒されることによって、アレルギー疾患の発症が抑制されることなども報告されています。最近では、米や麦と共生しているグラム陰性菌の存在も知られています。 玄米や全粒粉のパンなどにLPSが含まれていることが報告されています。このように、生活環境や食生活に変化をつけることによってアレルギーが予防できるかも知れません。アレルギー※LPS(リポ多糖)は、医薬学の分野では注射等により直接体内に入れることによって発熱を引き起こしてしまう物質としても知られていますが、自然環境の中で微量のLPSを食べたり、接触したりすることは問題がないと考えられています。参考文献 P. Strachan,.Br. Med. J., 299, 1259 (1989). Torsten Olszak, et al., Science, 336: 489-493(2012). Engl. J. Med., 347, 869 (2002).

PROFILE

北海道薬科大学薬理学分野 准教授、薬剤師、医学博士若命浩二
米国テキサス大学医学部ヘルスサイエンスセンター留学時代に「臨床栄養学」の奥深さに感銘。
帰国後は、従来の漢方薬、天然物化学などの薬学のカテゴリーにとらわれず、食品からサプリメントまで幅広いジャンルを研究テーマにしている。
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