
コーヒーやお茶を始めとした身近な飲料の多くにはカフェインと呼ばれる成分が含まれており、摂取した場合は興奮作用と覚醒作用・利尿作用などあります。
集中力を一時的に高めたい状況下や自律神経もしくは運動能力を促進させたい時にカフェインが有効であるものの、医薬品にも使用されていて過剰摂取を行うと身体に悪影響を及ぼす可能性があることから、エナジードリンクなど多量に含まれる飲料は一度に飲みすぎないよう注意する必要があります。
しかし、摂取した際における効果は個人差が大きく、飲んだ時の体調によっても身体への影響力は違ってきます。 副作用を起こさないよう摂取量に十分注意していれば良い効果を得られる場合があります。
最新の研究では、カフェイン代謝に関係する遺伝子が活性型の場合、心筋梗塞のリスクを減らす可能性があると報告しているものもあります。トロントの研究チームは、成人4000人(うち約2000人は心筋梗塞の経験者)の遺伝子とカフェイン消費量の関係を調べました。その結果、1日4杯以上コーヒーを飲む人は、心筋梗塞を起こすリスクが36%上昇するらしいことがわかりました。 カフェイン代謝に関わる高活性型の遺伝子保持者と低活性型の遺伝子保持者に分けて見たとき、コーヒーの大量摂取が心筋梗塞のリスク上昇につながるのは、低活性型の人だけだった。 逆に高活性型の人は毎日コーヒーを1〜3杯飲むと、心筋梗塞のリスクは大幅に低下した。カフェイン代謝が速い人たちにとって、コーヒーを飲むのは健康に良いということになる。ある研究者チームが、カフェイン代謝の高活性型と低活性型あわせて553人の血圧を調べた。その結果、コーヒーと高血圧の関係も被験者の遺伝子によって変わることが分かった。 カフェイン代謝の低活性型が、コーヒーを大量(あるいはそこそこの量)飲むと、高血圧になる可能性が大幅に上昇した。逆に高活性型の人では、コーヒーの摂取量が増えると高血圧のリスクが低下した。参照:For Coffee Drinkers, the Buzz May Be in Your Gene http://www.nature.com/articles/srep31590、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19451835
同じ量を摂取する状況を比較して、カフェインが身体に良い影響を与えるかどうかは体内における分解の速度が関係しているようです。 有効な代謝遺伝子を持っている人は分解の時間効率が高いことから、カフェインの副作用を受けることなく、コーヒーに含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質の恩恵を受けられる点で有利です。
一方でカフェインの分解が遅く、カフェイン代謝の低い人は長時間に及んで摂取したカフェインが体内へ留まってしまう理由から、少量を摂取しただけで体調を崩してしまったり、継続すると高血圧や心疾患といった病気の発症リスクが上がる危険性も考えられ、アルコールと同様で摂取量には注意しておきましょう。
コーヒーを眠気覚ましに飲むのも同様で、眠気が取れるかどうかは遺伝子によって必要量が決まっていて、素人でどれくらいの摂取量が適切かを判断するのは難しいように思われます。 また、自律神経系に不調が出やすい方もカフェインを含む食品の大量摂取は控えておいた方が良いでしょう。
それなら、カフェイン代謝遺伝子の活性・不活性型を調べたいという方がいるかもしれません。 最近は、一般用遺伝子検査で多型を手軽に調べてくれる企業が増えています。しかし、カフェイン代謝に関わる遺伝子は複数あることが分かっていて、遺伝的要因だけでなく環境的要因にも寄るところが大きいので受けた結果を丸呑みにせず、専門家に相談することをお勧めします。