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健康食として注目!!話題の酒粕について

健康食として注目!!話題の酒粕について
寒くて冷え切った体を芯から温めてくれる甘酒。その一杯を手にしてホッと一息つくと、心の中までじんわりとしてくるのではないでしょうか。
いまやこの甘酒、酒粕がちょっとしたブームになっているようで、書店やインターネットでも容易に色々な情報を手にすることができます。酒粕は、日本酒の醸造の過程で出てくる副産物ですが、日本の伝統的発酵食品とも言えますので、その健康効果に注目が集まるのも自然の流れとも言えるでしょう。

発酵食品としての酒粕

日本酒の蔵元は国内でも比較的寒冷な地域に多いようです。比較的温暖な地域では、冬場に仕込むなどの工夫をしているようです。これは、清酒醸造には「低温発酵」が基本で、日本酒の醸造時の温度が上がってしまうと雑菌に汚染されやすくなってしまうからです。

日本酒のルーツは、日本人が稲作を始めた頃まで遡ることができると言われているので、少なくとも千数百年以上の歴史はありそうです。日本酒は、米と麹菌、乳酸菌、酵母菌の複雑な発酵過程によって作られます。この発酵は、ワインやビールなどとは全く異なりますので日本独自の技術とも言えるでしょう。この複雑な発酵過程の副産物として出てくる酒粕も、発酵食品として、甘酒、奈良漬けなどに利用されますが、最近では化粧品、健康食品とその有用性が注目されています。

そもそも私たち日本人は、古来より微生物発酵を利用して、漬物や納豆、味噌など多くの発酵食品を生活に取り入れてきました。微生物醗酵には、「保存期間が長くなる」、「うま味が増す」などの多くの利点がありますが、近年ではその「発酵」によって生み出される成分にさまざまな生体機能調節作用があることが研究されています。まさに発酵食品は「健康食品」の王道とも言えます。

酒粕の成分

 酒粕には、微生物の発酵過程によって産生された非常に豊富な栄養素が報告されています。例えば、各種アミノ酸、ミネラル類、ビタミン類、そして「レジスタントプロテイン」と呼ばれるペプチドなどです。ネット上では「飲む点滴」などと表現されているのもうなずけます。

 最近の成分分析技術の進歩に伴い、日本酒、甘酒の成分を細かく調べることができるようになってきました。2016年と2017年にそれぞれ1報ずつ英語の論文が出ていますが、数百種類もの成分が網羅解析によって明らかになりつつあるようです。特に2017年の論文では、麹菌、乳酸菌による発酵過程の違いによって、有機酸、ビタミンB群などの含有量が変化することを示しています。また、乳酸菌をメインに発酵させた甘酒には、神経伝達物質の「アセチルコリン」などが含まれていることが分かりました。このような科学技術の進歩によって、伝統食品から新たな成分が明らかになってくるのは非常に興味深いことです。

 ちなみに、甘酒は米麹で米を数時間から一晩保温発酵させて作られます。麹菌によって、お米のデンプンが糖化するのでほんのり甘いノンアルコールの飲料ができます。もちろん、清酒醸造の過程で出てくる酒粕からでも簡単に甘酒を作ることができます。

酒粕の効用

 酒粕の機能性についてもさまざまな報告があります。特に、抗血圧作用(アンギオテンシン変換酵素阻害)は有名で、試験管内、ラット、ヒトを用いた丁寧な実験がなされています。これは酒粕由来のペプチドによると考えられています。
 酒粕中のペプチド以外の有効成分では、SAM(S-アデノシルメチオニン)などが報告されています。このSAMは、肝疾患、関節炎、うつ病、認知症などの効果が知られ、欧米では処方薬やサプリメントとして絶大な人気があります。実際の酒粕中のSAMの含有量は少ないかも知れませんが、発酵方法など工夫することによってこのような成分が多く含まれる酒粕の開発なども面白いと思います。

じつは、私たちの研究室でも酒粕の機能性についての研究を進めており、免疫や、抗酸化作用などこれまでにあまり発表されていない効果に着目しています。近い将来、これらの結果を論文で正式に公表できる時が来るかもしれません。

参考資料 「日本酒の科学」和田美代子著 講談社
Yoshifumi Oguro et al. Journal of Bioscience and Bioengineering.124 (2), 178-183, 2017

PROFILE

北海道薬科大学薬理学分野 准教授、薬剤師、医学博士若命浩二
米国テキサス大学医学部ヘルスサイエンスセンター留学時代に「臨床栄養学」の奥深さに感銘。
帰国後は、従来の漢方薬、天然物化学などの薬学のカテゴリーにとらわれず、食品からサプリメントまで幅広いジャンルを研究テーマにしている。
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